秘密の店(餃子・中国家庭料理の店「綏彩」)

昭和20年代の終わりから30年代の後半、私の子供の頃のはなしです。

 

私の実家は、食料品の商売をしていました。

職住一致の我が家は、番頭さんや店員さん達が大勢住んでいて、朝・昼・晩食事を一緒にしていました。

とてもにぎやかな食事で、大盛りの漬物や大きなご飯の釜があっという間に空になってゆくのが、今でも私の記憶に鮮やかに残っています。

そんな店の主人である父が、昼時になると時々いなくなることがあり、不思議でした。

綏彩の栗原夫婦です。


ある時、父の後をつけて行ったら、近所の中華料理店に入って行きました。

私は思い切って店の引戸をガラガラと開けて、父の目の前に立ちました。

父は、驚きと照れが入り交じったような顔をしました。

でも、すぐに笑顔で私に隣の席を勧めてくれました。

店は、お客でいっぱいで、店の主人の号令で、奥さん以下たくさんのコックさん達がきびきびと動いて、様々な作業をし、料理を仕上げていました。

後になって知ったのですが、この店は、北京大衆料理の店で、鍋貼り餃子や日本の手打ちうどんとほとんど変わらない麺で、ジャージャー麺やダァーロー麺を食べさせてくれる店なのでした。

カウンターには、ピータンや、ブタの耳の煮付け、チャーシューの塊などが、美味しそうに並んでいました。

父は、餃子を注文してくれました。

小麦粉をこねて、寝かして、それを棒状に伸ばし、それを5ミリぐらいの固まりにちぎって、とても薄い丸い皮をつくり、すぐにその場で秘伝の餃子の具を皮に包んで、焼く。

作りたての薄い皮が焼かれたこの餃子は、食べるとカリッ、サクッ。

中身の具の味は、今まで味わったことのない味覚で、原体験の驚きでした。

中学生のころまで、その店によく連れて行ってもらいました。当時、一皿7個で50円だったと思います。

そんなわけで、私は餃子が大好きなのです。

今ではタイプ別に行きつけの餃子屋さんをキープしているほどです。

何年か前に、思い出のこだわり餃子屋さんを作ろうと思い、中国本土の東北地方に餃子を求めて、一人旅をしたこともあります。わけあって、結果としてやりませんでした。

しかし、皆さん、私が子供のころのノスタルジーの一部を満たしてくれる、その系統を引き継ぐお店が2年前に開店したのです。

店名は、綏彩(すいさい)。

店主の栗原さん夫妻が二人で切り盛りしていて、2人の可愛い娘さんが、時々お手伝いにきています。

とても誠実なお店で、手作りの餃子を丁寧に一つ一つ作り上げます。

ぜひ機会があれば、餃子や、ダァーロー麺を食べに行ってみてください。

加藤のホームページで見たよ、と言ってくれれば、喜んでくれるはずです。

それ以上は、期待しないで!

何しろ、精魂込めて、手間をかけ餃子を作って安く皆さんに提供しているのですから。

トーク・パル 加藤隆夫の趣味と雑記の『五感を震わす快楽』

トーク・パル株式会社代表取締役社長の加藤隆夫とその仲間が趣味や雑記を綴るサイトです。

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